暗号理論入門 3.7〜3.10

- 作者: 林芳樹
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2012/04/20
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
3.7 剰余環の演算に対する計算時間
公開鍵暗号のあらゆる方式で、剰余環の計算が行われるので、計算量の知ることが重要。
modulo の二つの剰余類の和と差は時間
で計算される。
積と商は の時間がかかる。
すべての演算は の大きさの格納領域が必要。
3.8 既約剰余群
mod mのすべての既約剰余類の集合は、乗法に関する有限アーベル群である。
mod mの既約剰余類の群は、mod mの規約剰余群(primitive residue class group)といい、 と書く。
その位数を で表す。
写像
、
をオイラーの 関数という。
は、{1, 2, ..., m} の中の gcd(a, m) = 1である数aの総数である。特に
である。
例. は mod 12の規約剰余群である。
である。
が素数のとき、
が成り立つ。
3.9 群の元の位数
を乗法を演算とする群とし、1をその単位元とする。
とし、
となる自然数
が存在すれば、そのような最小の数を
の
での位数(order)という。
その他の場合、 での
の位数は無限大であるという。
での
の位数は
と書く。
例. の
の中での位数は12となる。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 4 | 8 | 3 | 6 | 12 | 11 | 9 | 5 | 10 | 7 | 1 |
は位数6をもつ。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 4 | 3 | 12 | 9 | 10 | 1 |
3.10 部分群
の部分集合
は、
の演算により自分自身が群をなすとき、
の部分群(subgroup)という。
各 に対して集合
は
の部分群をなす。それを
により生成された部分群といい、この部分群を
と書く。
ある について
が成立すれば、
は巡回群(cyclic group)といい、
を
の生成元(generator)という。
が有限群であるとき、
の任意の部分群の位数は
の位数を割り切る。(ラグランジュの定理)
3.11 フェルマーの小定理
であれば、
が成立する。