暗号理論入門 3.4〜3.6
- 作者: 林芳樹
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2012/04/20
- メディア: 単行本
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3.4 剰余環
環(ring)は組 において、 がアーベル群でかつ が半群であり、さらに、すべての に対して分配法則 と が成立するものである。
半群 が可換であるとき、環は可換であるという。
環の単位元とは半群 の単位元のことである。
組 は単位元1をもつ可換環である。 は単位元 をもつ可換環である。この環をmodulo の剰余環(residue class ring)という。
を単位元をもつ環とする。乗法についての半群 で、 が可逆であれば、 の元 を の可逆元、または単元という。
0でない元 に対し、ある0でない元 が存在し、 または となるとき、 を零因子(zero divisor)という。
整数環は零因子を持たない。
剰余環 の零因子は、 とする剰余類 である。もし が の零因子であれば、 となるある整数 が存在する。しかし でも でもない。
は の約数であるが、 の約数でも の約数でもない。 が成立する。
が素数のとき、 は零因子をもたない。
3.5 体
体(field)とは、0ではない任意の元が可逆であり、単位元をもつ可換環のことである。
例. 整数の集合は体ではない。(可逆な整数は1と-1のみだから)
実数全体の集合と複素数全体の集合は体をなす。
3.6 剰余環での除法
を環とし、 とする。
であるような が存在するとき、 は を割り切るという。
が環の元 を割り切るとき、 を の約数、 を の倍数といい と書く。
剰余類 が において可逆、すなわち が解をもつ必要十分条件は、 である。
である剰余類 をmodulo の規約剰余類(primitive residue class)という。
例. とする。剰余類 は、 であるときに限り で可逆である。したがって、mod 12の可逆剰余類は 、、、 である。
の逆元を見つけるには拡張ユークリッドアルゴリズムを使い、 となる。
剰余環 は、 が素数であるときに限り、体である。
( が となる で成立するときのみ)